BIOMEDICAL ENGINEERING

生体医工学

ICTの知見を用いて医療に貢献

MRIなどに代表される医療工学の分野は、会津大学の誇るICTの知見と高い親和性がある。医学へのニーズは社会的な要請によって変わってくる。会津大学では常に医療機関と連携し、時代に即した研究を進めている。同時に、病気の早期発見につながる研究にも力を注いでいる。病気の早期発見・早期治療ができれば治療の選択肢が増えトータル的な医療費の削減にもつながる。日本の財政面にも大きく貢献できる。

医療機関との連携で時代のニーズに応える

医療工学は理工学や情報学の知識や技術を、医療に応用する分野である。1950年代にアメリカから広がり、日本では内視鏡や超音波など世界でも最先端の医療機器を生み出してきた。遡ればレントゲン、昨今ではMRIに関連する研究などがノーベル賞に選ばれたように、マイルストーンになる発明ができればノーベル賞すら狙える分野である。ただ、医学のトレンドは時代で変わるため、それに対応するような修正も必要だ。新型コロナの抗原検査などは2、3年前には考えられなかったように社会の要請によって研究ニーズもそれに応じて変わってくる。

大学の研究がメーカーの開発と大きく違うのは、社会的に中立的な立場にあるということだ。それゆえ、病院などとの連携が容易になり、慎重に扱うべきな個人情報の共有も、共同研究という形で入手することができより深い研究が可能となる。

病気の早期発見・早期治療のために

会津大学の医療工学分野では、さまざまな医療機器を開発してきた。例えば最近の例で言えば、浴室心電図計の開発がある。日本人は毎日のように風呂に入る習慣があるがヒートショックなど、浴室での事故は決して少なくない。まして一人暮らしの高齢者が増えるこれからの時代において、浴室の安全は担保されるべきだろう。このシステムは浴槽に浸かるだけで心電図を計測でき、異常が生じればアラームが鳴る。さまざまなデバイスと連携することで実用性はさらに高まる。

早期に不整脈や虚血心疾患を見つけられれば、早期治療が可能になる。医療費の節減が可能になり、治療の選択肢も幅広くなる。

患者のQOLを上げつつ医療費の削減に

2020年の日本の医療費は43兆円に対して総GDPは5027兆円で、医療費はGDPのおよそ8%を占める。今後さらに医療を必要とする人口が増えていくのは間違いない。医療費の増大は財政的にすでに大きな問題になっている。私たちは医療と理工学の力で問題を解決していきたい。もちろん患者のQOLは大切で医療費の上昇をいかに抑えるかも、私たちの使命の一つだと感じている。

日本は公的な医療保障が整備されている。それゆえに健康への意識がゆるいという側面がある。例えばアメリカの場合、医療保険は傷病保険しかない。自分の健康は自分で管理する必要があり、日常的に健康を維持する努力を行なっている。日本はアメリカとは状況が違う。しかし例えばIOTを用いて健康を監視するシステムが利用できれば、病気の早期発見や治療が可能になる。それにより全体的な医療費も抑制されるはずだ。

「生体医工学」分野の研究例