20245月7日()、福島県民の栄誉となる功績があった個人・団体を顕彰する第34回みんゆう県民大賞(福島民友新聞社主催)の芸術文化賞を本学の宇宙情報科学研究チームが受賞しました。

 チームは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」や小型月着陸実証機「SLIM」などのプロジェクトに参加し、世界的な実績を積み重ねていることが評価され、チームには盾と副賞の50万円が贈られました。

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<コメント> 会津大学宇宙情報科学研究センター(*1)長 出村裕英教授(*2)

 会津大は小惑星からのサンプルリターンなど世界初の数々の偉業を成し遂げた探査機「はやぶさ」、「はやぶさ2」、月周回衛星「かぐや」、など、科学史に残るプロジェクトで重要な役割を果たしてきました。会津大は宇宙開発分野で20年以上にわたり濃密な歴史を紡いでおり日本の宇宙開発の一翼を担い、特にICT(情報通信技術)の実践的な実力は高い評価を受けています。そして今また、火星衛星からの試料回収を目的とする火星衛星探査計画(MMX)、欧州宇宙機関(ESA)の二重小惑星探査計画Heraなどいろいろなプロジェクトに関わっています。

 大学の評価を高めたのは、小惑星イトカワの形状解析などに携わったはやぶさプロジェクトです。一連の研究成果のうち、私が主著者となった論文「小惑星イトカワの全体形状と自転軸の観測」では、イトカワの全体形状、自転軸の向き、くびれた構造などを明らかにし、米科学誌サイエンスに掲載されました。「はやぶさ2」では、北里宏平准教授(*3)が主著者の論文のサイエンス掲載を始め、会津大教員と学生が共著の論文(*4)が世に出ました。2024年1月、世界初のピンポイント月面着陸を成功させた実証機「SLIM(スリム)」プロジェクトには大竹真紀子教授(*5)、本田親寿准教授(*6)が観測機器の運用などで幅広く参画しました。

また、大竹教授は並行して「月火星箱庭構想」(*7)にも取り組んでいます。それは南相馬市の福島ロボットテストフィールドなどを舞台に、実空間と、重力の異なる月面環境を模擬したバーチャル空間を組み合わせて宇宙探査用ローバーの検証を行う評価拠点の構築を目指すものです。この研究は、日本企業が米国宇宙産業へローバーを売り出す際の「保証」を付けることにも貢献すると期待されています。もちろん本県の産業振興にもつながることでしょう。大竹教授は構想の未来図を「評価拠点を中心に、宇宙・極限ロボットの開発、設計、製造、評価、運用、データ解析を通して担う、サプライチェーン(開発城下町)を構築したい」と語っています。

さて、宇宙情報科学研究センターでは、ミッションと並ぶ柱は、観測データに新たな付加価値を付ける「アーカイブデータサイエンス」の実現です。データはソフトウェアとセットで進歩しないと使える状態を維持できません。文部科学省共同利用共同研究拠点の活動として引き続き産学連携でソフトウェア開発などを進め、公開データに新たな価値を生み出しています。

 学生に学問の最先端を見せることで、やる気を引き出すトップダウン教育による人材育成と、出前講座による本県の理数教育の底上げの実践的研究と教育の両輪で会津大は未来を切り開いてまいります。

(*1) 宇宙情報科学研究センター 

(*2) 出村裕英教授 

(*3) 北里宏平准教授 

(*4) 本学Webニュース 

(*5) 大竹真紀子教授 

(*6) 本田親寿准教授 

(*7) 月火星箱庭構想