本学の北里宏平上級准教授と櫻井祥大学院生(研究当時)らの研究グループは、地球近傍小惑星(注1)が、地球や金星の影を通過する際に生じる熱衝撃(注2)を引き金として、天体表面の若返りを引き起こす可能性を明らかにしました。本研究成果は、科学誌「Nature Geoscience」に2026年1月15日に掲載されました。
地球近傍小惑星は大気を持たないため昼夜の温度差が大きく、岩石内部に熱応力が繰り返し生じる熱疲労(注3)によって、亀裂の進展や破砕が起こりやすい環境にあります。熱疲労は、太陽風照射や微小隕石衝突による風化を受けていない新鮮な物質が表面に露出する、天体表面の若返りを引き起こす要因と考えられています。しかし、この熱疲労の出発点となる最初の亀裂がどのように生じるのかについては、これまで明らかにされていませんでした。
研究グループは、地球近傍小惑星が地球や金星の影を通過する点に着目し、小惑星の軌道を過去に遡って計算し、小惑星が惑星の影を通過する頻度を調査しました。その結果、地球近傍小惑星は、潮汐力が影響を及ぼすほど惑星に接近するよりも、惑星の影を通過するほうが高頻度であることが判明しました。さらに、影通過時の幾何条件に基づいて実施した熱物理シミュレーションにより、惑星の影が岩石内部に初期亀裂を生じさせるのに十分な熱衝撃を与えることが示されました。これらの結果は、惑星の影による熱衝撃が、地球近傍小惑星の表面若返りを誘発する主要な要因である可能性を示しています。
本研究成果は、地球近傍小惑星の衝突リスク評価に貢献するとともに、2026年7月5日に予定されているJAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」(注4)による小惑星トリフネのフライバイ観測データの解釈にも寄与することが期待されます。
<論文情報>
論文タイトル:Surface rejuvenation of stony near-Earth asteroids by planetary shadows
著者: Kohei Kitazato, Sho Sakurai, Ryuki Hyodo & Naru Hirata
掲載誌:Nature Geoscience
DOI:10.1038/s41561-025-01907-w
URL:https://www.nature.com/articles/s41561-025-01907-w
<用語説明>
(注1)地球近傍小惑星
火星の軌道よりも内側を公転し、地球の軌道に接近する軌道を持つ小惑星。地球に衝突する可能性があるため、国際的な協力体制のもと、NASA、ESA、JAXAなどの宇宙機関によって継続的な観測が実施されている。
(注2)熱衝撃
急激な加熱または冷却により、物体内部に衝撃的な熱応力が発生する現象。
(注3)熱疲労
加熱と冷却の繰り返しにより、物体内部に周期的な熱応力が発生する現象。
(注4)小惑星探査機「はやぶさ2」
2020年に小惑星リュウグウのサンプルが入ったカプセルを地球へ帰還させた後、拡張ミッションとして新たな小惑星の探査を継続している。2026年7月5日には、小惑星トリフネを相対速度約5 km/sでフライバイ観測する予定。
https://www.isas.jaxa.jp/topics/004148.html