本学は2023年度に会津大学30周年を迎えます。これを機に、建学の理念である "to Advanced Knowledge for Humanity" の今日的意義を、教職員・学生・卒業生みんなで考えてみようと会津大学University Identity構築プロジェクトを始めました。

今回その一環で、外部有識者10名の方々に「会津大学とは何か?」を大きなテーマにしたインタビューを行いました。客観的な視点からのお言葉を元に、会津大学の存在意義や求められているものに迫っていきます。

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第8回:独立行政法人 国際協力機構 新井 和久 最高デジタル責任者

「会津若松市のさまざまな試みは会津大学があってこそ。30年後に向けての決め手は発信力。」

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Q. 新井様のご経歴と会津大学との繋がりについて教えてください。

1993年、JICAに社会人採用で入構した後、ボランティア事業、無償資金協力、調達、評価などに携わってきました。海外は1998年からネパール、2019年からアフガニスタンで勤務、帰国後、2021年7月から現在のポストである最高デジタル責任者(CDO)に就いています。企画運営室の麻野先生との繋がりから、JICAのデジタル関連事業を主導する部署の勉強のために、会津若松市のスマートシティ構想のお話を伺いに訪れたのが会津大学について知ったきっかけでした。

その際には、会津大学についてもいろいろなお話を伺いました。他の国立大学や私立大学などの情報系だと、理系が主流でも文系の試験があったりしますが、会津大学はすごく絞り込んだ入試をやってらっしゃると聞いて感心したのを覚えています。割り切ったことで「"世界で何番目"という評価を受けるのだな」という印象を持ちました。

Q.「地方創生」や「市民のWell-being向上」というテーマにおいて、会津大学はどのように貢献できると思われますか?

会津大学があるから会津若松市はさまざまな試みができるし、逆に会津大学も会津にあるからこそ地に足を着けた取り組みができるのではないかと思います。

例えば、会津若松市と、大学に来る先生方や学生と、地元で昔から商売をしている人、農業をしている人とで、価値観ややり方が違うところがたくさんあると思います。そういう人たちを、いろいろかき混ぜて、違う考え方をシェアして、それを議論してまとめていくことが大事だと私は考えています。

JICAでは社内外のDXに関連した様々な試みを繋いてまとめようと2021年の秋から本格的に取り組んでいます。JICAで、自分の担当事業以外は関係ないということではなく、「全員がプレイヤー」でいるために、全体の動きや方向性を全員に知らせて、かき混ぜて、まとめるのが私の役割です。この考え方は日本の地方にもつながると思います。

日本でいうと、東京と会津、私の出身である群馬などには格差があると思います。地方が遅れているという側面はありますが、そこは開発途上国と同じ構図で、「今からやるならジャンプすればいい」というくらいの気持ちで取り組めば良いと思います。会津の方々はそういうつもりでやっているでしょうから、日本のなかでもすごく良い事例になると思います。

会津大学でDX・ICTの技術、エビデンスの考え方を通じて、地方創生や市民への貢献をどうやっていくかを考えるときには、最終受益者はやはり会津の市民の方でしょうから、そういう人たちにいかに目配りをしていくか、丁寧にやっていくかが重要だと思います。

Q.30年後の社会はどうなっていると思われますか。また、その中で会津大学に期待することはどのようなことでしょうか?

第8回_新井様2.jpg日本は人口減少により経済規模は落ちていくと思います。そこで、住んでいる人の価値観を、経済的なものだけではなく、いろいろなことを認め合う大人の国にしていかないとつまらないでしょう。過去のやり方に固執しないでやっていかなければ、人口減を埋め合わせるための革新的な伸びにはつながらないと思います。

JICAでさまざまな国と関わってきましたが、日本でも他の国でも、途上国に対して「日本の方が上だ」みたいに思ってしまう人は結構多いと思います。実際には全然そんなことはなく、途上国の方が進んでいることが山のようにあります。そこを素直に認めて、世界と付き合っていくのが良いのではないかと思います。

会津大学には世界各地から学生や先生方が集まってきていて、いわゆる日本人とは違う価値観を持った人がたくさんいらっしゃいます。

そうした環境で生まれたものや取り組んでいることを、ぜひ積極的に発信してください。いま、私が周囲の人に「会津大学を知っているか?」と聞いても、残念ながらあまり知られていません。知名度を上げる手として、例えば会津大学のICTに強い点、オンラインでいろいろなことをやっている経験を活かして、社会人向けのICTに関するオンライン講座などを実施してはいかがでしょうか。

JICAでも、ICT関連の分野について、今勉強したい、勉強させられる、勉強せざるを得ない、という人は結構多く、夜間大学やオンライン講座で勉強している人たちがそれなりにいます。世の中にはさまざまなオンライン講座がありますが、アカデミアで実績のある尖った会津大学が取り組むことで大きな付加価値をつけられると思います。一般企業社員が会津大学のオンライン講座で学べば、全国に会津大学の同窓生が生まれ注目や露出が高まるでしょう。

これは規模の大きい例ですが、これ以外でも、大学の取組みや研究成果を周知する施策をもっと踏み込んでやることで、認知度が高まり、会津若松市だけでなく各地から頼りにされるようになると思います。「みんな会津大学を知らない」という現状が、30年後には「みんなが知っている会津大学」になっている姿を期待しています。

新井様、ありがとうございました!

次回は一般財団法人 とうほう地域総合研究所 理事長矢吹 光一様のインタビュー報告です。

~参加者募集~

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