本学は2023年度に会津大学30周年を迎えます。これを機に、建学の理念である "to Advanced Knowledge for Humanity" の今日的意義を、教職員・学生・卒業生みんなで考えてみようと会津大学University Identity構築プロジェクトを始めました。

今回その一環で、外部有識者10名の方々に「会津大学とは何か?」を大きなテーマにしたインタビューを行いました。客観的な視点からのお言葉を元に、会津大学の存在意義や求められているものに迫っていきます。

=======================================

第7回:自然科学研究機構 国立天文台 渡部 潤一 上席教授

知的好奇心に基づいて自由に研究ができるのが大学。アカデミアの面白さ、重要さを説明していかなければならない。

第7回_渡部様1.jpg

Q. 渡部様と会津大学との繋がりについて教えてください。

私は出身が会津若松なんです。開学当初に会津大学に伺ったことがあり、外国の先生方が多かったことと、教授会を英語でやっていること、すべての文章が英語で書かれることが印象的でした。国立天文台は、当時まだそこまで国際化しておらず、どうしてよいのか分からない状態だったので非常に参考になりました。その後、実際に国立天文台にも国際連携室をつくったり、国際支援のためのヘルプ・デスクを作ろうという話になったときにも、会津大学を視察させてもらいました。

また、2019年度以降はARC-Spaceの関係で会津大学の先生方とお付き合いしています。

Q.  世界・地域・社会にとって、会津大学の存在意義はどのようなものだと思われますか?

会津大学は少なくとも日本の惑星科学の中では、極めてメジャーな存在になっています。会津大学の中では特定の一分野ではありますが、アカデミアでは非常に大きな存在になっていると思っています。

国際化という点で見ても、開学当初から非常に先進的な試みをされていたのが会津大学の特色ではないでしょうか。

一方で会津出身者として思うのは、日本の地方都市や地方が抱える問題に対しても会津大学が大きな存在になっているということです。

ARC-Space選定委員のときにすごく感心したのが、「ICTを通じてどのように地域支援ができるか」を、非常に考えていらっしゃるということでした。

会津若松そのものがスマートシティ構想を持っているのも、間違いなく会津大学があるからだと思いますし、高齢化・過疎化する地方の中で、大学がいかに貢献できるのかという先進例になるのではないかと思っています。

Q.「地方創生」や「市民のWell-being向上」というテーマにおいて、会津大学はどのように貢献できると思われますか?

第7回_渡部様2.jpgスマートシティ構想もそうですが、会津大学があることで、ICTを利用したまちづくりや人づくり、企業や人材を集めることが可能になるのだと思います。近年リモートワークを推奨する企業も増えていて時流にも合っているだろうし、その点は会津大学による、目に見える形での貢献なのではないでしょうか。

一方で、大学は「割と自由に知的好奇心に基づいて研究ができる場所である」とも思います。例えば国立天文台の社会貢献で言えば、「みんなが好きな天文学を通じて、その知名度を生かして、子供の知的好奇心をうまく引き出すきっかけにする」という説明をしています。

研究はあくまで人々の知的欲求を満たす「文化」の一環です。「直接役立つこと」に無理やり結びつけようとすると、そこに予算を割く必要があるのかとか、「必要性」を問う議論になり、おかしなことになってしまいます。

私たちは定期的に情報発信や記者会見などを実施することで、発表内容を取り上げてもらい、多くの人にわれわれの活躍と成果だけでなく、面白さを知ってもらうことが、国立天文台の目に見える役目なのかなと考えています。実際に地方で講演会などをすると、「望遠鏡はいくらするのか」と聞かれます。実際、高価な望遠鏡ではありますが、「多くの人が土星を観たのときの『うわー!』という感動は金額に変えられない」と伝えると、みなさん納得してくれるんです。

つまり、アカデミアの立場に立っている人間が、引いてしまってはいけないのかなと思います。ずっと主張し続けないといけないし、それがあって、知的好奇心や知的存在感のある国になるのではないかと思っています。

もちろん、地域貢献も大事ですし、直接的に目に見える貢献を求められるのも分かりますが、それを大事にしつつ同時にアカデミアの面白さ、重要さを説明していかなければならないのだと思います。

Q.これからの30年を見据えて、会津大学に期待することはどのようなことでしょうか?

30年後、技術の進歩はさらに加速するだろうと思います。技術のコアを成すために、新しい技術をつくり便利なものをつくる人材を育てることが、会津大学の役割だと思います。

そして残念ながら、会津でも過疎化が止まらない状況があります。ICTを使ったり、他の技術を駆使したり、インフラを整備したりすることによって、自治体が人々にどのような生活の場を持ってもらうのかということを本格的に考える時代になってきたのではないでしょうか。集中化は絶対に必要で、それを管理するのはICTになるだろうと思います。人口が減ることに対して楽観はしていませんが、ICTがそれを支えて、過疎地であっても豊かに暮らしていけるという実感を皆さんに持ってもらう時代が来ると思っています。その時に会津大学の技術がそれを支えられれば良いのかなと思います。

渡部様、ありがとうございました!

次回は独立行政法人 国際協力機構 最高デジタル責任者の新井 和久様のインタビュー報告です。

~参加者募集~

Facebookグループにて、会津大学University Identity構築プロジェクトの検討プロセスを公開中!お気軽にご参加ください(会津大学教職員・学生・卒業生限定のグループとなります)。

QR.jpg