本学は2023年度に会津大学30周年を迎えます。これを機に、建学の理念である "to Advanced Knowledge for Humanity" の今日的意義を、教職員・学生・卒業生みんなで考えてみようと会津大学University Identity構築プロジェクトを始めました。

今回その一環で、外部有識者10名の方々に「会津大学とは何か?」を大きなテーマにしたインタビューを行いました。客観的な視点からのお言葉を元に、会津大学の存在意義や求められているものに迫っていきます。

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第6回:福島県 会津地方振興局 髙野 武彦局長

「国立・私立大以上に地域貢献が求められる。課題解決型の産学連携がキーになる」

Q. 高野様と会津大学との繋がりについて教えてください。

第6回_高野様1.jpg平成19年にUBIC(会津大学産学イノベーションセンター)の事務長と企画連携課の副課長として配属されたのがはじまりです。その後、東日本大震災が起きたことで復興支援センターの立ち上げにも携わりました。ICTとの関わりでは、後に福島県立医科大学で医療研究推進課長として、医療と製薬会社やIT企業との産学官連携、いわゆる医工連携などをやってきました。

今日は、会津大学職員OBであり、また、県の会津地方振興局長という立場でお話できたらと思っています。

Q.  世界・地域・社会にとって、会津大学の存在意義はどのようなものだと思われますか?

国際社会、日本社会、そして地域社会の3つの点が、会津大学の使命を捉えるのに重要だと思っています。まず、国際社会の面ですが、30年前の建学時は、日本のシリコンバレーを目指しておりました。今では国際ランキングに会津大学が出てくるようになっていますね。国際社会に対して、アカデミックな分野からはかなり目標を果たせているのかなと思っています。

また、日本社会においても、大手企業等に卒業生を輩出し、活躍している実績があり、会津大学が日本社会、企業社会の中で貢献していると言えます。

会津大学に一番期待を寄せているのは、地域社会です。それは、会津大学が県立大学であるゆえんですね。県立大学であるからこそ、国立大学や私立大学以上に地域貢献が求められる。会津大学としては、まず、会津大学発ベンチャーを創出するというところから地域貢献が始まりました。

現在、「地方創生」といわれます。「地方創生」には、簡単に申し上げますと、①東京一極集中の是正を図る、②地方財政や地方サービスの向上、③地域産業の強化、という3つの柱があります。この中で、会津大学が果たす役割というのは、③地域産業の強化にどれだけ寄与できるかということだと思います。これに貢献してこそ、県や地域から評価される大学と言えるのではないかと思います。

Q.「地方創生」や「市民のWell-being向上」というテーマにおいて、会津大学はどのように貢献できると思われますか?

会津地方振興局長として、会津地域の振興について何をすべきか考え、全国初となる「人生100年時代 会津地域自治体広域連携指針」を2022年1月に策定しました。その具体的方策として、7月には「会津DX日新館」を立ち上げました。UBIC事務長の頃から温めてきた考えを盛りこみ、会津大学なしでは実現しない施策となっています。

特に、指針12の「産学官連携による新技術等の創出」という項目では、会津大学をはじめ、人口規模、自然環境等、新技術等の実装や実証に適した環境が整っているため、様々な産学官連携による社会実験の適地であり、新技術や特許等の新しい価値の創造が期待できる、としています。まさに、会津大学に求められていることだと思いますが、それを私たちの広域連携の指針の中に取り入れることにより、会津大学だけの課題ではなく会津地域全体の課題として受け止めて地域づくりを進めていこうと考えています。

第6回_高野様2.jpg具体的には、会津大学や福島大学の皆さんに住民の中に入っていただき、地域課題を把握し整理していただきます。それを行政が入って広域連携で解決していくという仕組みを考えています。昨年、振興局では「草の根DX」という別事業で、局内の業務改善や合理化のアイデアを職員から募りました。その際に、会津大学の学部生にアルバイトの形で協力をいただきながらDXを進めていきました。結果として業務を3,485分も短縮することができたんです。このように、会津大学の学生に活躍していただいてDXを進めていくことが可能なのです。地域の企業の皆さんにも、是非会津大学の学生の皆さんを活用して企業のDXを進めていただければと思います。

地域課題の根本は住民の中にあり、解決策もまたその中にあります。だからこそ、学生の皆さんに住民の中にしっかり入って、課題の掘り起こしをしていただく。それを学生の柔軟な視点を活かしながら行政と解決策を図ることが大事だと考えています。この積み重ねにより、地域社会に会津大学の評価が広まってくれるのではないかと思います。

Q.これからの30年を見据えて、会津大学に期待することはどのようなことでしょうか?

ICT技術とネットワーク社会が進化した今日では、ICTは人類のさまざまな事象をつなぐ手段になりました。つまり、コンピューター理工学部という枠の中で収まらなくなったということを感じています。今後、ICTはすべての学問の領域につながっていくことになる。その中で会津大学は、30年前はシリコンバレーを目指しましたが、社会の情勢変化をしっかりと捉えて、世界の知の拠点としてさまざまな学問領域をつなぐ存在になれればよいのではないでしょうか。いわゆるハブ機能、知の拠点としての「HUB of Knowledge」という存在になることを期待しています。

また、産学連携という視点で言えば、常に「基礎研究」と「社会への還元」を50:50で考えていくべきです。真理を追究するための研究はもちろん重要で、今後も進めていく必要があります。一方で、企業や地域の課題・ニーズを掘り起こし、解決していく課題解決型の産学連携が必要です。その両輪で進めていく必要があるのだと思います。

髙野様、ありがとうございました!

次回は、自然科学研究機構 国立天文台 特任教授の渡部 潤一様のインタビュー報告です。

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