本学は2023年度に会津大学30周年を迎えます。これを機に、建学の理念である "to Advanced Knowledge for Humanity" の今日的意義を、教職員・学生・卒業生みんなで考えてみようと「会津大学University Identity構築プロジェクト」を始めました。
今回その一環で、外部有識者10名の方々に「会津大学とは何か?」を大きなテーマにしたインタビューを行いました。客観的な視点からのお言葉を元に、会津大学の存在意義や求められているものに迫っていきます。
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第1回:富士通株式会社 シニアディレクター 野山 孝太郎 同窓会会長
「30年前に先進的だった『コンピュータサイエンス・英語教育・国際化』は、一般的に求められるリテラシーになりつつある。会津大学は、強みを今後どの方向に伸ばしていくかの岐路に立っている」
Q.野山様と会津大学の繋がりについて教えてください。
会津大学の2期生で、同窓会には立ち上げから参画しました。卒業してから現在までずっと富士通に勤めていて、現在はクラウドネイティブな技術領域をリードする60名ほどの専門部隊を統括する役職に就いています。
私が高校3年生だった当時は、「コンピュータの単科で、英語での教育、教授陣も海外から集める」というコンセプトを明確に打ち出していた会津大学に勢いと突破力を感じて受験しました。
Q. 世界・地域・社会にとって、会津大学の存在意義はどのようなものだと思われますか?
私が入学した頃「コンピュータサイエンス・英語教育・グローバリゼーション」を重視した会津大学は国内でも非常にセンセーショナルな大学でした。ただ、30年の間に「デジタルネイティブ」という言葉が生まれ、富士通においても国際化やボーダレスは当たり前になっているし、公用語を英語にする企業も増えています。会津大学の特色に、周りがいろいろな形で追いついてきたと言えると思います。会津大学としては、今後30年を見据えたときに、この特色に専業してさらに深いところに存在意義を求めていくのか、それとも世界の別の技術との融合など、少し違う側面に存在意義を伸ばしていくのかの岐路に立っているのかなと個人的には思っています。
一方で建学の理念については、30年も前に「コンピュータをやるからには人間中心で考えなければならないという」ヒューマンセントリックな考え方をきちんと組み込んでいたのは非常に素晴らしいと思います。これから検討していくUniversity Identityの考え方にも、「コンピュータを使うのは人間で、人間社会のために使うものである」という理念を込めていくのは重要なことだと感じています。
例えば法律の世界では、YouTube上での誹謗中傷や、プロバイダ経由でどう情報を開示するのかなどの観点から、インターネットの知識が必要になってきます。逆に技術者・開発者としても法律や制度を知っていないと、安全なWebサービスが展開できません。すごく複雑化していく中で、境界線をバサっと切れない領域が非常に増えてきています。こういった領域で物を語れる人の重要性がどんどん高まっていると感じています。
Q.30年後、地域・社会はどのような姿になっていると思われますか?それに対して会津大学はどのように関わっていると思われますか?
やはりコンピュータの重要性は、今後30年経っても高まりこそすれ低くなることはあり得ないでしょう。ただ、コンピュータサイエンスとの付き合い方はだいぶ変わってくるだろうと思います。ほんの1人のスーパーエンジニアが世界や市場を動かす中で、より「それらを使いこなすためのリテラシーを含めた技術」というのが多くの人に求められる世界になってくると思います。
またコロナ禍で大きく社会が変容しました。コロナ以前は「地方創生」と言うと、一番先に企業誘致やビジネス誘致という話が浮かびましたが、リモートワークやワーケーションが当たり前になった今、エンジニアの「個人誘致」みたいなものをきちんとやっていかないと、地域活性になっていかないだろうと思います。
会津大学や市を中心として、エンジニア同士の交流や大学との技術的な面を含めたコラボレーションなどが図れると、非常に「エンジニアの個人誘致」が考えやすいのかなといちエンジニアとしては思います。
Q.会津大学に期待することはどのようなことでしょうか?
私自身、会津大学で表面上だけでなく、本質を突いたコンピュータサイエンスについて学んだというのが大きな力になっています。
一方、企業として求める人物像ということで言えば、やはりコンピュータサイエンスをものすごく突き詰めた人であれば欲しいけれども、「ある程度突き詰めている」くらいの人であれば、他の領域に対しても明るいとか、そういった多様性を求める部分が非常に大きくなってきているのも事実です。
大学も専門性を育てる側面に加え、コンピュータサイエンスをどう使うかという裾野を広げていくために、よりルール化・倫理的な話など、違う領域と組み合わせて展開を考えていくという側面も必要になってくると思います。特に後者の方が市場的にも大きく、人の需要も必要性も高まると予想しています。そういったところにどう学生たちを育てて送り込んでいけるか、どう研究して展開していけるかが、今後ますます重要になってくると思います。
野山様、ありがとうございました!
次回は、開学当時から会津大学を知る日本工学アカデミー 阿部 博之 名誉会長のインタビュー報告です。
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