英国の学術誌『Scientific Reports』に、スペイン・デウスト大学のイレーネ・デ・ラ・クルス=パビア氏、会津大学のジュリアン・ヴィジェガス上級准教授、イタリア・パドヴァ大学のカロリーヌ・ナレ氏、早稲田大学理工学術院の岩本 教慈氏、パドヴァ大学のラモン・ゲバラ氏、同じくジュディット・ジェルヴァン氏による論文「The Role of Syllabic Rhythm in Speech Perception Across Languages」が2025年7月に掲載されました。

 皆さんは、音声の再生速度を速めすぎて、何を言っているのか分からなくなった経験はありませんか?研究によると、非常に速い音声に短い無音の区切りを定期的に挿入することで理解しやすくなることがわかっています。ただし、それはその無音が自然な話し言葉のリズムに沿っている場合に限られます。

 本研究では、この手法が英語以外の言語でも有効かどうかを検証しました。その結果、フランス語では効果があったものの、日本語では同じ手法が通用しませんでした。日本語はより速い言語リズムを持つため、同様の無音挿入では理解が向上しなかったのです。この研究成果は、私たちの脳が音声を理解する際に、それぞれの母語に固有のタイミングパターンに強く依存していることを示唆しています。とくに、音声が非常に速い場合や聞き取りにくい場合には、その影響が顕著になります。このようなリズムの理解は、自動翻訳、音声認識、補聴器などの技術改善にも寄与する可能性があります。また、言語が脳の自然なリズムといかに深く結びついているか、そしてそのリズムが言語ごとにどれほど異なるかを示す興味深い結果でもあります。

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論文詳細

雑誌名:Scientific Reports

著者:I. de la Cruz Pavía、J. Villegas、C. Nallet、K. Iwamoto、R. Guevara、J. Gervain

論文タイトル:The Role of Syllabic Rhythm in Speech Perception Across Languages

掲載日:2025年7月

論文リンクhttps://www.nature.com/articles/s41598-025-07053-y

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