笑顔は声を通じて聞き手に伝わる

 Linguistics Vanguard に、本学のヴィジェガス ジュリアン上級准教授が共著者として執筆した論文「Smiles can be conveyed to listeners via speech signals: a case study with Japanese labiodentalization(笑顔は声を通じて聞き手に伝わる:日本語の唇歯音化を用いた事例研究)」が掲載されました。

見えなくても、笑顔を「聞く」ことができますか?

 誰かが笑顔で話しているとき、変化するのは顔だけではありません。話し声にも変化が生じます。
ヴィジェガス上級准教授を含む研究チームは今回、視覚的な手がかりがなくても、聞き手が声だけから話し手の笑顔を認識できることを明らかにしました。


 その鍵となるのは、特定の子音の発音方法に生じる微妙な変化です。日本語では、笑顔で話す人は、両唇を使って発音する[b]のような両唇音を、上の歯と下唇を使って発音する[v]のような唇歯音に置き換える傾向があります。笑顔によって口の形が変化するため、両唇をしっかり閉じて発音することが難しくなり、その結果、音が変化するのです。

 プロの声優による録音を用いて2つの実験を行ったところ、参加者は、こうした唇歯音を含む場合に、「笑顔で話している」声を一貫して聞き分けることができました。なお、声の高さや音量の影響を調整した上でも、この結果は確認されました。つまり、笑顔の音声的な特徴は実際に存在し、聞き手はそれを聞き取ることができるのです。この研究の着想は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行中に働いていた日本人看護師の経験から得られました。一日中マスクを着用していたその看護師は、「だいじょうぶ」という言葉を話す際、[b]の音を[v]に近い音に変化させることで、マスク越しでも患者に温かみのある気持ちを伝えられることに気づきました。これは、笑顔で話すときに自然に生じる声の特徴が、マスクを通しても伝わっていたことを示しています。

<詳細>
掲載誌: Linguistics Vanguard
著者: 川原 繁人(Kawahara Shigeto) ; 秋田 喜美(Akita Kimi) ; 長塚 全(Nagatsuka Zen) ; ヴィジェガス ジュリアン(Villegas Julián)
論文タイトル: Smiles can be conveyed to listeners via speech signals: a case study with Japanese labiodentalization
掲載年月: 2026年8月
論文掲載ページ:
https://doi.org/10.1515/lingvan-2026-0011

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