本研究では、ブラジル・サンパウロ州の詳細な犯罪データを用い、COVID-19による移動制限が犯罪に与えた影響を分析しました。特に、州・自治体・センサスブロックといった「空間の違い」と、年・週・時間帯といった「時間の違い」の両面から、犯罪の変化を総合的に捉えています。
その結果、窃盗や強盗などの財産犯は、移動制限の導入直後に一時的に減少することが確認されました。一方で、その影響は地域や時間帯によって大きく異なり、必ずしも一様ではないことも明らかになりました。例えば、都市内でも地域によって減少の程度が異なり、スラム地域(ファヴェーラ)では異なる傾向が見られました。また、犯罪ホットスポットや時間帯ごとの発生パターンが変化するなど、より細かな変化も確認されました。
これらの結果は、犯罪の変化を理解するためには、単に全体の増減を見るだけでなく、「どこで」「いつ」起きているのかを詳細に分析することが重要であることを示しています。本研究は、感染症対策のような社会的ショックが犯罪に与える影響をより包括的に理解するための新たな視点と枠組みを提示するとともに、今後の犯罪予防や都市政策の検討に資する知見を提供するものです。
<論文情報>
論文タイトル:A Multi-Scalar Causal Approach across Space and Time: An Application to the COVID-19 Pandemic in São Paulo State, Brazil
著者:Katsuo Kogure, Yoshito Takasaki
掲載誌:Journal of Quantitative Criminology(犯罪学分野の国際的な学術誌)
出版日:2026年4月15日