2024年5月27日-30日にギリシャのアテネで開かれた、IEEE ISBI2024のpopular vote pitch competition(※1)で、博士後期課程の翁偉浩さん(指導教員朱欣先生(※2))は、"Popular vote"special prizeを受賞し、StartSmart(※3)のnext accelerator programに参加する資格を得ました。
 提案プロジェクトは、"Advancing Health Equity Through Accessible Skin Disease Detection"(利用しやすい皮膚病検査で健康の公平性を促進する)というタイトルで、欧米の低収入層に食品を配る際に、ビデオカメラで皮膚の健康状態を解析するプロジェクトです。これは別件の福島県立医大との共同研究からヒントを得たものです。

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翁さんのコメント
 ISBIは医療画像解析における最高峰の学会です。今年のISBIで、内視鏡を解析した論文のひとつが採択されたため、私はISBIに参加する資格を得ました。近年、様々な医療解析手法が登場していますが、画像解析手法の実際の成功例は少数です。昨年から、ISBIはスタートアップの発展を通じて様々な画像解析手法の実用化を促進するためのピッチコンペティションを開始しました。
 私は幸運にも、ヨーロッパの学校との2つの交流プログラムに参加する機会を得ました。その際に、先進国の首都であってもホームレス状態にある人々が大勢いることを知りました。首都以外ではさらに多くの人々が困窮していることは想像に難くありません。私はこれらの人々を救いたいと願っています。
 この機会を活かして、私たちは、見落とされがちな人々に食糧と医療を提供する青写真を描きました。私たちの構想では、この組織は寄付金に頼ることなくこれらの人々を持続的に支援することができます。さらに、それはAI開発における公平性、多様性、包括性も促進することもできるでしょう。

朱 先生のコメント
 IEEE ISBI 学会は毎年春に開催され、医療画像処理分野における最高峰の学会です。そして、昨年から、industrial daysや起業家向けのpitch competitionも実施され、ベンチャーキャピタルから投資を受けた受賞プロジェクトもあります。今回、福島県立医大との共同研究でまとめた論文がIEEE ISBI 2024に採択され、学会に参加することができました。
 一般発表のみでは退屈ではないかと思い、ウェン君にpitch competitionに参加することを勧めました。ウェン君はとても忙しいなか、いいアイデアを出し、応募してくれました。そして、幸いなことに、発表の資格を得た5テーマの一つとして組織委員会に選ばれました。開会直前まで徹夜でプレゼン資料を作成し会場に到着すると他の4チームはすべてベンチャー企業でした。緊張しながらもウェン君は壇上で発表を終え、大会委員からの厳しい質問にも何とか答えてくれました。もうだめだと思いきや、講演後の食事会で見知らぬ参加者が「ビデオカメラ1台で人の健康情報を取れるチームがあるなんて!」と驚きの声を上げていました。どうやら、私たちのプレゼンテーションは大きなインパクトを与えたようです。そして、最終日まで何も連絡がなかったので、最初は閉会式に参加する気はありませんでしたが、優秀論文賞、ポスター賞などの受賞者に拍手を送るために参加しました。
 最後に、pitch competitionの受賞チームが発表されました。目を疑いました、驚いたことに、私たちのプロジェクト「Advancing Health Equity Through Accessible Skin Disease Detection」が「人気投票」特別賞の受賞者としてスクリーンに映されました。驚きのあまり、賞状を持ちながら恥ずかしがって頭を上げないウェン君に、みんなが笑顔で祝福してくれました。ウェン君、これからも、いろんなことにチャレンジしてください。」

※1 IEEE ISBI2024 popular vote pitch competition

※2 朱 欣 上級准教授

※3 StartSmart