2015年8月17日(月)から5日間にわたり、enPiT(※1)短期集中合宿「ビジネスサービスデザイン実践」が行われ、会津大学、はこだて未来大学、同志社大学、室蘭工業大学の大学院生が参加しました。今年のテーマは「函館で起業をデザインする!」でした。函館の資源を使い地域に貢献し、ITを活用したイノベーティブな起業とはどのようなものになるかを提案しました。

 学生らはまず、市の職員の方々から高齢化や空き家などの問題とその取組について話を聞き、函館市が抱える様々な課題について理解を深めました。次に、函館市内で起業した様々な業種の会社を訪問し、起業のきっかけやその目的、また地域への貢献についてヒアリングを行いました。学生たちは聞き取った話の中から起業のヒントを引き出すため、コンテクスチュアル・インクワイアリー(※2)と言う手法を実践しました。この手法を使用し、話し手と聞き手が相互に有用な情報を得るトレーニングを行いました。

 学生たちは、フィールドワークによって様々な視点から得たアイデアを持ち帰りました。それを基に箱庭を使って起業のイメージを表現し、チームごとに発表しました。

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革製品のデザイン会社を起業した方へのインタビュー(左)、アイデア出しと箱庭づくり(右)

 会津大学の昆憲英さん(修士1年)は、「この活動を通し、課題を発見することの難しさ、そして起業する上で考慮すべき様々な社会の仕組みがあると理解できました。今までは、学内のみで学んでいましたが、今回の学外での学習によって、まだまだ未知の分野がたくさんあると痛感しました。課題の調査方法やアイデアの発想方法を身につけたことを、今後のPBLに活かしたいと思います」と振り返りました。

 最終日にはファシリテーションスキル(※3)の講義が行われました。円滑でかつ活発な会議進行のスキルを学び、リーダーとして公平な立場で組織をまとめるファシリテーター演習が実施されました。

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チームごとの発表会(左)、箱庭法で起業イメージを表現(右)

 8月24日(月)からは各大学に戻り、遠隔操作による「ビジネスアプリケーション開発基礎演習」にて、開発環境の構築からプロセスを学びました。今後は10月からの「分散PBL」に向けた技術習得を目指します。各大学合同チームによるミニPBLでは、アプリ開発に取り組みました。1週間という短期間での開発で、学生たちは遠隔ツールを駆使し、他大学のチームメンバーとコミュニケーションを図りながら開発を進めました。

 会津大の赤間裕平さん(修士2年)率いるチーム「DHA」は、鍵や財布を「忘れんBOX」に入れるとポイントが得られる、置き忘れ防止アプリを開発しました。はこだて未来大、同志社大のチームメンバーと協力し合って開発したこのアプリは、オンライン投票1位という高い評価を獲得しました。  

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オンライン投票1位を獲得した「忘れんBOX」

 会津大学では、このような様々な実践的なソフトウェア開発の機会とチームで取り組む環境を提供し、問題発見と課題解決能力を身につけた創造性豊かな人材の育成を目指しています。このカリキュラムは大学院生を履修対象としており、来年度も実施予定です。

※1 enPiT:分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク:他大学の学生との交流を図りながら、PBLを通して実社会で必要とされるチームでの課題解決能力を養うことを目的としています。はこだて未来大: 実践型人材育成事業 (enPiT FUN)についてはこちらのFacebookもご覧ください。
※2 コンテクスチュアル・インクワイアリー:ユーザーに対するより深い理解と、プロジェクトを進めるにあたっての根拠となる情報を引き出すインタビューの手法を指します。
※3 ファシリテーションスキル:会議、ミーティング等の場で、発言や参加を促したり、話の流れを整理したり、参加者の相互理解をサポートすることで、組織や参加者の活性化、協働を促進させるスキルのこと。また公平な立場にたってグループ内でファシリテーションを行う者のことを、ファシリテーターと呼びます。