2026年10月1日、会津大学コンピュータ理工学部の愼 重弼教授らの研究グループによる、手書き動作と機械学習を活用したパーキンソン病(Parkinson's Disease: PD)の診断支援に関する研究成果が、国際学術誌 Scientific Reports *に掲載されました。
論文タイトル
"HandPD37: advanced handwriting dataset for Parkinson's disease diagnosis using stack ensemble ML"
* Scientific Reports https://www.nature.com/articles/s41598-026-63031-y

 パーキンソン病では、振戦(手の震え)、動作の遅さ、筋固縮などの運動症状が現れ、手書き動作にも特徴的な変化が生じることが知られています。本研究では、こうした微細な運動変化を定量的に捉え、パーキンソン病の診断を支援することを目的として、新たな手書きデータセット 「HandPD37」 を構築しました。
 HandPD37には、パーキンソン病患者78名と健常者54名の計132名から収集した手書きデータが含まれています。参加者は、文字の反復記入、円やスパイラルの描画、日本語の仮名・漢字、波形や幾何図形など、合計37種類の手書き課題をタブレット上で実施しました。タブレットからは、ペンのX-Y座標、筆圧、時間情報、ペンの傾きや方向などの時系列情報を取得しました。 
 これらのデータから、書字速度、加速度、ジャーク(加速度の変化率)、筆圧、ストローク角度などの動的特徴を解析し、最終的に171種類の特徴量を抽出しました。また、Random Forest、Support Vector Machine、XGBoost、LightGBMなど10種類の機械学習モデルを組み合わせたスタッキング・アンサンブル手法を導入し、パーキンソン病患者と健常者の識別性能を評価しました。 
 その結果、全37課題を通じて高い識別性能が得られ、171種類の特徴量を用いた解析では**37種類の手書き課題における平均分類精度97.10%**を達成しました。また、アンサンブルモデルでは37課題中16課題において最も高い分類精度を示し、多くの単独の機械学習モデルと比較して、より安定した識別性能が確認されました。
 特に、**スパイラル描画(Task 18)や日本語文字のトレース課題(Task 28)、波形描画(Task 33)、Archimedean spiralと筆記体 "l" の反復記入(Task 34)**などが、パーキンソン病患者と健常者を識別する上で有効な課題として確認されました。Task 18は10種類の個別モデルのうち7モデルで上位5課題に入っており、特に安定した識別情報を持つ課題であることが示されました。
 本研究成果は、タブレットを用いた簡便で非侵襲的な手書き検査から、パーキンソン病に関連する微細な運動機能の変化を定量化できる可能性を示しています。将来的には、医師による診断を置き換えるものではなく、病院での診察、リハビリテーション評価、経過観察などにおいて、医療専門家を支援する客観的な診断支援ツールとしての活用が期待されます。
 今後は、より大規模かつ多施設の臨床データによる検証に加え、加速度センサやジャイロセンサ、手書き画像情報など、他のセンシング情報との統合を進めることで、パーキンソン病の早期発見や症状評価への応用を目指します。


【論文情報】
Title: HandPD37: advanced handwriting dataset for Parkinson's disease diagnosis using stack ensemble ML
Journal: Scientific Reports
Volume: 16
Article number: 30515 (2026)
DOI: 10.1038/s41598-026-63031-y 
Authors: Jungpil Shin, Abu Saleh Musa Miah, Akane Hashimoto, Koki Hirooka, Md. Al Mehedi Hasan, Najmul Hassan, Mitsuki Aihara, Ryoma Takahashi, and Shunsuke Kobayashi. The author affiliations include the University of Aizu, Hokkaido University, CAC Corporation, Dokkyo Medical University, and Teikyo University.
Published: 01 October 2026
Link to paper: https://u-aizu.ac.jp/files/Shin_et_al-2026-Scientific_Reports.pdf