-- 肌色の仮面 --


彼は, ---実際かれはずっと心の中にはびこり続けてきた病巣を取り除くことができないでいた. それは, 彼の見るかがみの中に, いかにも間の抜けた微笑みとともに浮かび上がってくる. この顔. いつも失望を持ってそれでもいっしょに暮してきた. こいつのために今までずっと おれは損をしてきたんだ. この顔のために, 女に相手にもされず, 自信も持てず, 外出にさえ 気が滅入る. いつも真っ直ぐ前を見れないでいた. そして人に向き合えばうつむいて目をそらして しまう. . この顔が我慢ならない. どうしても脱ぎ捨ててしまいたい. そんな気持ちでいっぱい だった.

いつものようにやるせない気持ちで鏡の前をたつと, いつしか眠ってしまった. すると, 薄暗い 地下室に, ろうそくが揺れていた. そして, そのともしびに照らし出されたものは, 人の頭の骨 だった. 頭蓋は薄明かりに照らされて一列に木製のながいテーブルの上に置かれてある. やがて 闇の奥に重い声が響いた. ”一番好きな骨をとらえよ. ”

ほどなく, 骸骨にしては何かとても可愛らしい, 微笑みかけているような骨を見つけて, 吸い込まれるようにそれに近づいた. 気がつくと彼はその骨を胸に抱きかかえていた. 彼はその骨を見つめた. そしてそれはかれのなかで, , ,

彼の抱いた骨は, 次第に暖かく, 重くなり, 骨の表面からは肌色の肉が湧き出してきた. 鼻が隆起し ほほが膨らみ, やがて髪が伸びだした. そして瞼が開いたときには, 中に茶色い瞳が輝いていた. その顔は彼に抱かれたまましあわせそうににっこりと微笑んだ. しかしそれは --- まぎれもなく 彼自身の 頭部 だった.

99/11/09
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