-- タイムマシーン --


SF では必須アイテムのタイムマシーンだが,その実現可能性については,技術的な問題よりも, 時間に関する哲学によって見解が違ってくるだろう. タイムマシーンといっても,いわゆるウラシマ効果で未来に行けることは(小さいスケールでは) 検証済みであり, またこのようなことが起こっても何ら矛盾は生じない.未来に行くタイムマシーンは原理的に実現可能である.

しかし SF で出てくるものは過去にも行けるものである.少し前に,未来から来たと語る人が ネットを騒がせたことがあった. 彼はタイムマシーンの原理図などを提示した.その真偽についてはさておき, このような過去に行けるマシーンを考えるには,四次元の『時空』が実在すると仮定する必要がある. 物理学では,そのような大きい空間を『素朴に』仮定し,普通に議論するのであるが, どこかに時間の軸を含めた宇宙である『時空』が現実に存在しているかどうかということは, 一応疑ってみる必要がある.

そもそも時間というものは,ありふれた物理量ではあっても,実際は運動を記述するために導入されたものであり, 基準となる運動によって他の運動を測る尺度に過ぎない. 現実にある宇宙とは,本質的には空間や物質の運動であって,その記述のために導入された時間は副次的な存在で, 空間と時間軸の直積である時空(あるいはより複雑な多様体)はあくまで仮想的な空間である. それは宇宙を論ずるための道具として使う分には問題はないが, 実在している根拠はなく,むしろ実在する方が不自然である.

というのも,もしそのような四次元時空が実在しているならば, 過去や未来の任意の時刻における宇宙が現在の宇宙と同等に存在することになってしまう. タイムマシン論者はこのような事柄をパラレルワールドなどと言って安易に認めてしまうのだが, そうなると,非加算無限個の空間のコピーが数珠繋ぎになって,1つ1つが動いていることになる. このような宇宙観は現実の宇宙を説明するのに不要なだけでなく不自然であり, 何よりも,このような結論を招いた元凶は,時間軸を実在するものと安易に認めたことである.

我々に必要なものは現在の宇宙が運動しているだけのことであり,過去は,その記憶や記録が現在に残っているだけで, 過去宇宙そのものは今となってはどこにも存在しない.こう考えれば奇妙なパラレルワールドは回避できる. (ただし,『現在』が完全な点ではなく小さい広がりを持つことはありうる)

以上の見方をすれば,過去に戻るタイムマシンなどありえないといえる.なぜなら目的地が存在しないのだから.

09/6/18
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