-- 未 知 の 種 族 --


ある日, 部屋で奇妙な虫を見つけた. バッタのようだが, ノロノロ歩き, 手足をやたら嘗めまくっている. 気持ち悪いので, 外に逃がした.
だが, 彼らもきっといろんなことを感じて生きているのに違いない. 少しだけ哀れを感じながら, 虫けらは何のために生きているのか? ありふれた疑問が頭をもたげ出した...

気がつくと, 薄暗い野原の中に人かげが5-6人, こちらに向って手招きしていた. 近づいてみると, 背丈はあるもののどの顔も子どものような顔立ちで, なぜか, 男か女かも判別できなかった.
”何ですか?”
と言う疑問に彼らが微笑んだ瞬間, 彼らの恐ろしい能力が自分の中にはっきりと伝わってきた. これは大変なことになった. この力は普通じゃない. 早く逃げなければ. とっさにそう思った.

それでもからだが動かずに, いやというほど, 巨大な力を思い知らされる.
彼らは何もかも知りつくしていた. 信じ難い知能を持っていた. 何百年も生き長らえてきた. そのとき, こんな言葉が思い浮かんだ.
”進歩は, 不完全なことの証だ”.
彼らは長い間進歩とは無関係でいた. 完全だからだ. では何のために生きているのか? しかし その問いは, 何ゆえ宇宙が ”生きて” いるのか? と言うのと同じことだった.

恐怖に身を震わせた時, 彼らはいつしかやさしい微笑みを浮かべていた. いや, 本当ははじめからずっとそうだったのかも知れない. 彼らは脅威だが, そんなに恐くはないのかも知れない. 彼らはむしろ, 人間を愛しているようだ. 落ち着くにつれて, そんな感じが伝わってきた. これが本心なのだろうか?
”人間がすきだ. おまえが犬や猫をすきなように......”

その言葉が終らないうちに, 急に苦しくなって目が醒めた.
”変な夢!”
すると胸の上に, 普段は寄り付かない筈の太った飼い猫が, こちらを向いて小さい寝息を立てていた......

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97/05/30. .
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