彼女はずっと闇の中で生き続けていた. そのかすかな呼吸に気づくものもいない. それがいつまで続くのか. しかしそんなことにもお構いなしで, 彼女は静寂の中でひたすら眠り続けた. やがて彼女は特別な朝を迎えた. 目覚めた彼女は, 一心不乱に出口を探した. 扉を開けると, そこには黒くて大きな壁があった. 彼女はそれを越えなければならなかった. 一歩一歩這上がった. ときおり風を感じながら, 重い体をひきずっていった. そのうち強い光に包まれた彼女は, 背中に痛みを感じた. 眩しい世界がぐるりと回る. それから急に遠くまで見渡せるようになった. 自分がどこにいるのかはじめてわかった. 固いからにつかまって, 遠い山や森をみた. そして, そこに行けるような気がした.
彼女はすでに空から小さな自分の抜け殻を見つめていた.
そして, いつかもう一度その大きな木に戻ってこようと思った.
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